適性検査での中学受験 公立中高一貫校の問題と対策方法は
適性検査での中学受験は公立中高一貫校が導入していますが、最近では私立中学の受験でも適性検査型入試を取り入れるところが多くあります。
大学入試改革での共通テストでは記述問題が今後どのように扱われるかはわかりませんが、近年の中学受験では自分の考えを求められるような流れがきつつあります。
特に適性検査では問題や解答方法が通常の入学試験とは違い特殊なため、対策をどのようにすれば良いのかわからない、というご家庭も多いと思います。
今回は、気になる中高一貫校の受検や適性検査の対策などについてお話します。
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公立中高一貫校の受検
公立中高一貫校の受検は、学校教育法の規定によって入学試験という言葉を使いません。
適性検査の真の目的は自分で問題を解決できる力やリーダーシップをとることができる人材を見つけ出すことにあります。
中学受験の適性検査とは?
公立中高一貫校の入学者の選抜方法は、私立中学で行われる入学試験とは違い適性検査問題です。
適性検査は筆記テストですが4科目教科別の学力試験ではなく総合的な試験となります
社会問題や環境問題のような身近なテーマを題材に取り上げる事が多いのも特徴です。
受検には多くの学校で作文もあり、考え方を問われるような、答えが1つではない問題が多く見られます。
- 長い文章を読みテーマを把握し、複数の資料を読み取る読解力
- 課題を発見し論理的に考え解決策を探る思考力
- 問題の条件を満たしながら考えたことを相手に的確に伝えられる表現力
などが求められます。
合否は適性検査・作文・面接・報告書などから総合的に判断されます
出題傾向は掴みにくく、どのような準備をすれば良いか不明な点も多いのですが、必要な知識は小学校で学ぶことだけです。
どれだけ覚えることができたかということではなく、その覚えたことを基本にどれだけ考えられるかということが重要になってきます。
↓
( ○ )覚えたことを基本にどれだけ考えられるか
自分の意見や提案をどのぐらい相手に伝わるよう表現できるかが大事になります。
気になる公立中高一貫校の話
公立中高一貫校という学校
1998年の学校教育法の改正で
- 公立学校
- 6年間の一環教育を行う
という指針のもとに新たに生まれたのが公立中高一貫校です。
都道府県立の学校や区立・市立の学校もあります
中等教育学校・併設型・連携型の3種類がありますが、受検では進学校を志す中等教育学校と併設型の学校のことを指します。
少子化の影響で私立中学を受験するお子さんの数が減少しても、変わらず高い人気があるのも公立中高一貫校の特徴です。
中学は義務教育期間中なので学費自体はかかりません。
高校は公立なので授業料はもともと安いです。
現時点では高等学校等就学支援金制度があるため年収約910万円未満(目安)の世帯については授業料相当額を国から支給されます
この政策が続く限り条件を満たすご家庭では、高校の授業料は実質無料です。
公立一貫校の主体となっている高等部が各地域で有名な進学校であることが多いため、中学部も高い価値があると評価されています。
学校による進学指導も熱心で、難関の検査を合格した子供達が集まっているため学習環境として魅力的です。
2000年前後に開校した公立中高一貫校が、現在高い大学進学実績を出しているのを見ると、私立中学は経済的に難しくても公立中高一貫校なら我が子を通わせたいと思う親御さんは多いのではないでしょうか。
公立中高一貫校の受検
地域や学校で異なるものの、ほとんどの公立中高一貫校の学校で行われるのが適性検査と呼ばれるものです。
学習環境が良い上に学力試験でもないことから受けてみようと考えても対策せずに受検をすれば合格するのは難しいです
たとえば6年生から勉強を開始して、公立中高一貫校の適性検査の受検をしたとします。
たとえ不合格になったとしても地域の中学に進学して勉強をがんばり高校入試に備えるというご家庭も多いです。
公立中高一貫校はいずれも倍率が高いため、訓練なしで挑むのは危うさが伴います。
- 私立中学との併願
- 高校受験も視野に入れて中学受験で公立中高一貫校を受検する
という選択肢になる場合が多いです。
作文
面接
小学校から提出の書類
と適性検査のほかに面接などを行う学校もあり、小学校から提出する調査書なども選考に使われて判断されます。
合否の決定は適性検査の出来次第となりその際の配点や加点のバランスは地域や学校で異なります
合格ライン上では調査書も重要になってくるため、小学校での生活も気を抜くことができません。
実際の適性検査については、過去問集として出版されている他に、各学校のホームページでも公開している場合があります。
まず実際のものを見てみるとわかりやすいと思います。
初見では会話文や音声などの出題方法や、提示される資料の多さに言葉を失うかもしれませんが、完璧を目指すテストではないのでそこまで考えすぎずに、まずはトライしてみてください。
通学範囲に複数の公立中高一貫校がある場合
家から通える範囲に公立中高一貫校が複数ある地域は珍しいです。
もし通学できる範囲に公立中高一貫校が複数校あったとしても、試験は同じ日に開催されることが多いため、そうなると併願はできません。
公立中高一貫校対策として勉強を開始するときには、目標が決まっている方がやる気がでやすいものです。
勉強が進むにつれて志望校が変わる場合もあるでしょうが、どの公立中を目指すかと言う事は一旦決めておいた方が目安が立てやすいです。
ただ学校によって適性検査の出題の特色が違うので、その対策は必要になってきます。
公立中高一貫校の偏差値
一般的に公立中高一貫校の偏差値は、その地域で人気の進学校並みの高さになっていることが多いです。
また近くに最難関中学がある場合、受験生が併願することが反映して偏差値が極めて高くなっている中高一貫校もあります。
中学受験での適性検査問題
適性検査の出題のタイプ
中学受験での公立中高一貫校の適性検査の出題のタイプは主に2パターンあります。
②文部科学省の全国学力・学習状況調査を基礎にする問題
さいたま市立浦和中学校の適性検査では、私立中学受験生が違和感なく受けられるような問題の造りになっています。
大多数の公立中高一貫校は、文部科学省が実施する全国学力・学習状況調査問題が基礎になっている出題パターンです。
出題範囲は小学校で習うこと全般のため、特殊な計算方法などのような難問はありません。
ただし全国学力・学習状況調査問題とは出題方法が違い検査時間内に取り組む問題の量が多く、考えを整理して的確に表現する早さが求められます
適性検査と入試との違い
入試で行われる学力試験とは違い、適性検査では4科目に分かれていません。
検査Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ(国語+社会のミックスの文系、算数+理科のミックスの理系、作文)のようにタイプが複数に分かれる事があります。
科目別の試験ではないことから、4科目がミックスされた総合的な問題も見られます。
また地球温暖化や食料自給率など、国際的な社会問題についても出題される傾向があります。
出題問題の特徴については学校ごとによって異なりますが表やグラフなどの資料を基礎にして考え、まとめる力を要求する事はどの学校にも共通しています
どの学校にもアドミッションポリシーというものがあります。
アドミッションポリシーとは自分の学校の特色や教育理念などに基づいて、どのような学生像を求めるかをまとめたものです。
多くの公立中高一貫校のアドミッションポリシーには、グローバル社会でリーダーシップをとることができる人材という言葉が含まれています。
情報処理能力やコミニュケーション力を備える人を望んでいる表れなのでしょう。
独特な出題
- 決められた言葉を使い作文する
- 引用文を読んで作者の主張と自分の考え方を織り交ぜて作文する
- 2つの正反対の主張の文章を読んで自分の考えをまとめて作文する
などのようにただの作文ではなく自分の考えをしっかり表現できる能力が求められます
算数では単純な計算問題ではなく、考える力を試される問題が出題されます。
与えられた資料をもとにテーマは何か、条件は何かということを考えその中から解答する必要があります。
文章にして解答する事になりますが、時には図を要求されることもあり、解答を導き出す手順は独特で複雑です。
公立中高一貫校に求められる考える力
出題の特徴は学校ごとに違っても適性検査で求められる力は資料をもとに考えることです
しつこいようですが受検に必要な知識は小学校で習う事柄のみで、レベルの高い技術などは必要ありません。
ですから小学校生活の中で行う、読み書きなどがとても重要になります。
適性検査のような出題形式は小学校生活の中では触れることがないため、慣れておかないとどうすればいいのかわからず困惑してしまいます。
考え方の展開方法
①グラフを読みとる
グラフで示されている場合は、数や量についてグラフからどんなことがわかるかを考えます。
②表を読みとる
表の中のどの項目に着目したら良いか考えます。
比較する場合どのような見方をすれば、より正確に判断することができるかを考えます。
③地図を読みとる
地図を読み取るためには方位や地図記号は必須項目です。
道のりや時間・速さの関係をもとに考えさせる問題も多いため、計算方法や単位換算などにも慣れておくことが大切です。
④実験や観察結果から考える
実験や観察結果からどんなことがわかるかを考えます。
実験や観察の条件を正しく読みとり、条件によって結果がどのように変わったか・変わらなかったか、などに着目します。
⑤写真やイラストなどから考える
身近な題材をもとにしたテーマが多く算・国・理・社+家庭科も含めるような様々な種類の問題が出題されています。
写真やイラストなどの図が何を表しているのか、どんなことがわかるのかなどを考えます。
⑥会話文での話し合いの様子などのまとめをもとに考える
話し合いの様子の会話文と資料をもとに考える問題です。
ポイントとなる会話文に線を引きながら読み解くことが大切です
⑦資料をもとに考え説明などを書く
資料をもとに考えや説明などを書く問題では、資料を正しく読みとること・問題の条件を正しくつかむことが大切です。
答えをまとめるときは条件に沿った内容になるように気をつけながら、資料から読み取ったことや自分の意見などを漏らさずに書く必要があります。
⑧資料をもとに作文を書く
資料をもとに作文を書く問題では資料を正しく読み取ること・問題の条件を正しくつかむことが大事です。
作文の構成を決め、指定の文字数も頭に入れながら書いていきます
このように資料をもとに問題の対象となる重要箇所をきちんと抑えながら、総合的に考えることが大事です。
以上の事柄を、検査時間内の中で上手に時間配分をしながら、できる限りの情報処理をし解答することが求められます。
適性検査問題を解く対策と手順
物事をしっかり見分け正しく理解
問題の状況、設定やテーマをしっかりと見分けて正しく理解し、必要な条件やデータを読み取ります。
理解すること
設定
テーマ
会話
必要な条件やデータの読み取り方法
グラフ
表
地図
実験や観察結果
写真やイラストなどの図
会話文など
思考の展開
論理的に物事を整理して考え、決定します。
①条件を正しく読みとる
②何を表しているのか
③どんなことがわかるか
④どこに着目したら良いか
⑤比較する場合どのような見方をすれば、より正確に判断することができるか
⑥適切な計算方法や単位換算
⑦条件によって結果がどのように変化する(変化しない)のか
⑧ポイントとなる部分はどこか
問題に対して解答を出す
問題の条件に合うものを選び出して、まとめたものを相手に伝わるよう表現します。
答えをまとめる
資料を正しく読みとる
条件を正確につかむ
問題の対象となる資料の重要箇所をきちんと抑える
作文の構成を決める
どのような内容を書くか考える
どのような順序で書くか決める
指定の文字数を頭に入れる
相手に伝わりやすい表現方法を考える
相手に伝わる表現方法
文章
表やグラフなどの作図
増加する適性検査型入試
2019年には埼玉県に、公立中高一貫校さいたま市立大宮国際中等教育学校が開校しました。
当初と比べて公立中高一貫校新設で志願者が激増した、というほどではありませんが今なお高い人気であることに違いありません。
その中で公立中高一貫校の受検では合格者よりも不合格になるお子さんの方が多いというシビアな現実があります
私立中学校の適性検査型入試
公立中高一貫校の受検生に私立中学も受け入れをするために導入されたのが、近年増加している私立中学校の適性検査型入試です。
首都圏の中学入試では2014年から適性検査型入試が年々増加し、2019年に行われた中学入試では147校の私立中学が適性検査型入試を実施しました。
私立中学の適性検査型入試に出願する小学生も増加し続け、2013年では約1000人だった受検生は2018年入試では12,000人にもなりました。
適性検査型入試という呼び方ではなくても
私立中学の中には適性検査型入試という表現を使わず
- 思考力入試
- PISA型入試
- 総合型入試
- 自己アピール(プレゼンテーション)型入試
- 基礎学力型入試
など各学校の意向に沿った名称として、新たな入試を実施している学校もあります。
このような私立中の適性検査型入試で求められる力は公立中高一貫校の適性検査と同様に考える力や表現する力になります
なぜ私立中学も適性検査型入試
なぜ多くの私立中学が適性検査型入試を取り入れ始めるのかは、2020年大学入試改革の方向性とほぼ合致しているからだと思われます。
- 2020年年度実施の大学共通テストで求められる学力
- 公立中高一貫校の適性検査で求められる力
- 私立中学の適性検査型入試で求められる力
などの根底には同じ考え方があります。
公立中高一貫校を第一志望にしているご家庭にとっては、私立中学の適性検査型入試を受ける事にも大きい意味があります。
適性検査の対策や自分の力を試す意味ということと共にもし公立中高一貫校が不合格だった場合に、もう一つの進路として私立中高一貫校を検討するための要因にもなるからです
大学入試改革など日本の教育が変化しようとしているときに、多様な入試のタイプが生まれているのが近年の中学受験です。
この先の進路と併願校を親子で話し合ってみることも大切かもしれません。
まとめ
公立中高一貫校は学力試験ではなく適性検査と呼ばれる特殊な検査方法です。
出題範囲は小学校で習う範囲ですが教科書の内容を覚えるだけではなく、覚えたことをどれだけ発展して考えられるかが問われます。
考え方は一朝一夕に身につくものではないので、普段から家庭でも社会問題について話したり「なぜそう思うのか」と考察するクセをつけることが大事になります。
公立中高一貫校にたとえ不合格になったとしても、後にやってくる大学入試では、この考える力はきっと役に立つはずです。
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