中学受験の作文対策と勉強法 公立中高一貫校が求める書き方とは
適性検査型入試で中学受験をする場合に出題される作文は、学校の宿題で出されるような感想文ではありません。
公立中高一貫校が求めている作文は、あるテーマに対した時の自分の考え方や、なぜそう思ったのかなどの理由がきちんと書いてある形式の文章です。
基本的に自分の考えと理由が書ければ、全体の文としての形はできあがりますが、そこから内容をもっと濃いものにするためにはどうすればいいのでしょうか。
今回は、公立中高一貫校に求められる内容や書き方を習得するための、作文対策と勉強法についてお話します。
▼その他の公立中高一貫校の気になる対策や勉強方法について▼
PICK UP公立中高一貫校合格に必要な対策や勉強方法とは?塾や模試のおすすめは?
公立中高一貫校の受検で作文が大事な理由
適性検査Ⅰに求められるもの
例えば都立の中高一貫校では適性検査Ⅰとなりますが求められるものは読解力と表現力で、配点は全体の約20〜30%だといわれています
全体の約1/3と、なかなか高い配点がある訳ですから作文が全く書けないならば合格への道はなく、早めに対策を始める必要があります。
適性検査Ⅱにも作文が必要
都立中高一貫での適性検査Ⅱ・Ⅲは、算数・社会・理科をミックスしたものですが、その問題でも文で答えることができないといけません。
文章を書く力はどんな問題でも必要とされるのです
作文は書くのがメインですが、その訓練をしていく中では読解力も養われ、色々な作文を読むことで書く力だけでなく読む力もつけることができます。
「しっかり読んで丁寧に書ける」という能力は普段の小学校での学習にも大いに役に立ちます。
その結果として提出書類である調査書のポイントアップにもつながります。
受検後にも必要になる作文力
作文を書く力は受検で終了になる訳ではなく、中学に入学した後も大事になってきます。
多くの公立中高一貫校は国公立大学への進学を視野にいれた教育を行っています。
これまでのセンター試験は廃止され、その代わりとなる大学共通テストでの記述式の問題は今後どのようになるかわかりません。
ですが多くの国公立大の2次試験では、今後ますます記述式試験が導入されていくでしょう。
そのため、答えを丸暗記するのではなく「なぜこのような答えになるのか」を考え、読み手に伝わるよう表現することが必要になってきます
このように作文の力は1つの試験としてではなく、たくさんの分野で活躍する力なのです。
中学受験のための作文対策とは
公立中高一貫校の適性検査の作文ではどんな問題が出るか気になるところです。
受検のための作文対策として、どんな問題が出題されるのか過去問からみて知っておく必要があります
適性検査の作文の出題傾向を知る
中学受験での公立中高一貫校の適性検査の作文では主に2パターンの出題傾向があります
②事柄に関して賛成か反対かの自分の意見を述べ、さらにそこに解決のためにどうすればいいかを書く
1つ目は何かの事柄に対して自分の意見を書くものです。
自分の意見に加えて、その後の自分のするべき行動について書くことを求める問題が出題されることが多いです。
2つ目は事柄に関して賛成か反対か自分の意見を述べ、解決のためにはどうすればいいかを書く作文です。
どちらもただ自分の意見をいうだけではなく、そこから先の事を考えてまとめなければいけません。
都立中高一貫校での過去問では、事柄に対して自分の意見を30字程度でまとめる記述の問題が2題と、2つの文章から自分の体験や考えをまとめる約400字の作文が出題されています。
配点としては記述問題40%・作文60%だとされていますが、いずれにしても
- 物事をしっかり見分け正しく理解する
- 思考の展開をする
- 問題に対して解答を出す
という事を、検査時間内の中で上手に時間配分をしながら、できる限りの情報処理をし解答することが求められます。
過去に出題されたテーマ
適性検査の作文でどんなテーマが出題されるかは、誰にもはっきりと知ることはできませんが
- 小学校で学んだこと
- 家族や周りの人への理解や感謝
- 時事問題について書いたりするもの
などはよく出題されています。
時事問題は単に社会的な出来事や事件を知っているというのではなくそれについて自分はどう考えているかを文章にできるようにしておく必要があります
テーマ例
参考として過去に出題されたテーマをいくつか見ていきましょう。
まずは読書に関するテーマです。例えば
・資料や自分の体験をもとに、学級で読書量を増やすための提案文を書く
というものなどです。
このようなテーマで400~500字程度の文を書くことが求められます。
また人に伝えるということがテーマとして出題されることもあります。
・文章を読んだうえで「自分を成長させるためにはどのような出会いが必要だと思うか」についての自分の考えを書く
などですが、ただ書くだけではなく資料や文章に目を通さなければいけないので、実際に自分で文章を書く時間はそれほど十分にはありません
誤字脱字に注意しながら丁寧に書くことがもちろん大切ですが時間配分にも注意してください。
読むスピードと書くスピードの両方の力をしっかりとつけておきましょう。
志望校の出題傾向を知る
適性検査の作文問題には、各校の個性が出る場合があり同じ都道府県の公立中高一貫校でも違いがあります
志望校の適性検査の問題については、過去問集として出版されている他に、各学校のホームページでも公開している場合があります。
まず実際のものを見てみるとわかりやすいです。
評価される作文・論文を書くには
そもそも作文とは何も制約のない文章のことをいいます。
ですから作文では限られた文字数の中で、いかに自己表現をするかということが前提になります。
それに対して、与えられたテーマに対して自分の意見を述べて結論に持っていく文章は、作文ではなく論文になります。
適性検査の作文は、どちらかといえば論文に近いかもしれません
作文は起承転結が大切ですが、構成がしっかりしているだけでは合格の条件にはなりません。
作文でも論文でも試験に合格するためのポイントがあります。
それは、言いたいことではなく言うべき事を言えているかどうか、が評価のポイントになることです。
↓
( 〇 )言うべき事を言えているかどうか
これは採点するポイントが以前の作文・論文より大きく変化してきたからなのです。
もちろん学校により記述や作文の評価するポイントには違いがありますが、いずれの学校も型に当てはめたような作文ではなく自分の意見にもっと内容が加えられた自分独自の表現を求められるという大前提があります
そのためには
- 自分の意見を正しい言葉で簡潔に述べる
- 言うべき事をわかりやすく伝える
- 読み手を納得させられるような内容
を書けるようにしなくてはいけません。
公立中高一貫校の適性検査では基礎力はもちろん、加えて解決策を見つけることができ、それを実行できるような子供が求められています。
学力だけではなく人柄なども、合否を判断する基準になるという事です
時間が足りないのは読むのが遅いから?
都立中高一貫校の適性検査Ⅰの文章は合計で約4000字ですから読むだけでも時間がかかりますし、当然読むのが遅いお子さんは考える時間が短くなり不利になります。
まずは対策の一歩として普段から文章を読む速度をペースアップできるように取り組んでいきましょう
1分間に読める文字が600字以上なら読むスピードに問題はありませんが、読むのが遅いお子さんには、文章を指でなぞってあげて1分で500文字ぐらいのスピードで読める練習をしましょう。
物事をよく考えて頭の中で自分の思う事をまとめてみる練習をしましょう。
関連記事中学受験の国語で時間が足りない 読むのが遅い!長文読解のコツは
中学受験のための作文勉強法について
中学受験のための作文勉強法については、とにかく書くことに慣れなければ進んで行きません。
文章を書くことが苦手なお子さんは、まず100字・200字といった少ない文字数からのチャレンジが大事ですが、ただやみくもに書くだけでは時間の無駄になってしまいかねません。
勉強を始める前に、まず作文を書く上でのポイントを押さえておきましょう。
作文を書くときのポイント
作文・論文で求められているのは、文章が上手いか下手か、内容が面白いかどうかではなく論理的な文章が書けているかどうかです。
作文を書く上でのポイントをまとめました。
構成力
論理的な文章を書く時に重要になってくるのが構成力です。
基本的な構成は「起・承・転・結」で
- 起で話に引き込み
- 承で主題を展開し
- 転で視点を変えて興味を引き
- 結で全体をまとめる
というものです。
これを無視して突然、承や転から始めるのでは、読んでいる方は何が何だか分からない文章になってしまいます。
作文や論文にはそれに合った構成があります。
これを押さえて書かれていない文章は論理的で説得力のある内容になりにくいのです
実際高得点を取る作文や論文は、本人が意識しているいないにかかわらず、構成のしっかりしたものになっていることが多いです。
主張したいことは何か
テーマのある作文や論文の場合、与えられた課題に対し賛成か反対で答えるという原則があります。
そしてなぜ賛成(反対)なのか、その理由を説明して読み手を納得させればそれで立派な文章になります。
そして内容に説得力があるほど高い点数がもらえます。
自分の立場を述べて、その理由を論理的に説明することが大切です。
段落を決める
段落は改行のようなものです。
つまり1つの目的を持った文章のまとまりを一段落として考えるということです。
約400字程度の文章であまり改行が多いと、読みやすさだけを意識した文章のようになってしまいます
必要以上に改行はしなくて良いのですが、段落は必ず必要です
例えば起承転結で書くなら、段落は最低4つ必要だということになります。
段落ごとに主に何を書くか
問題には「段落の中に〇を入れる事」などの条件がつく場合もあります。
説明をしすぎてしまい字数が足りなくなる、ということを防ぐためにも、それぞれの段落ごとに主に何を書くかを想定しながら進めていきましょう。
構成を考えて書く場合、200字なら〇分、400字なら〇分、と大体何分くらいかかるのかをあらかじめ計っておき、ペース配分を考える練習もしておくと良いでしょう。
作文用紙の使い方と注意点
作文用紙の間違った使い方をしていると「私は書き方のルールをわかっていません」とアピールしているようなものですから基本的な使い方は知っていなければいけません
作文の基本的な書き方は、小学校で学習する段落の構成や、主語と述語がきちんと対応しているかなどです。
誤字・脱字・あて字・略字はもちろん、くずし字や続け字も書いてはいけません。
表現したいことを伝えるために書くわけですから、それが伝わならなければ何にもなりません
作文用紙は下手でもいいので丁寧に書くことを心がけましょう。
話し言葉や、ら抜き言葉も説得力が感じられず採点者に好印象を与えません。
正しい言葉の使い方をし、学習している漢字は使って書きます。
漢字や熟語があやふやな場合は、無理して使ってしまい間違えたのでは逆効果になるだけですから、こういう時は別の言い回しを考えて表現しましょう。
送り仮名にも注意をして、文体(ですます調)は統一します。
・主語と述語は対応しているか
・誤字・脱字・あて字・略字・くずし字・続け字などはNG
・作文用紙は下手でも丁寧な字で書くことを心がける
・話し言葉、ら抜き言葉もNG
・学習している漢字は使う
・漢字や熟語があやふやな場合に無理して使い、間違えてしまったら逆効果
・別の言い回しを考えて表現する
・送り仮名にも注意する
・だ・である、です・ますなどの文体は統一する
基本は1マスには1字
1マスには1字が原則です。
句読点(、。)拗音(ゃ、ゅ、ょ)や促音(っ)も1マスに入れます。
書き始めと段落の始めは1マス空ける
書き始めは必ず1マス空けて2マス目から書きます。
段落の始めを1マス開けないで書くと行末に句点が来た場合、改行をしたかどうか紛らわしくなります
句読点
句点(。)は文の終わりにつけてその文が完結したことを示します。
読点(、)は文章を読みやすくしたり、意味を明確にするためにつけます。
特に読点をつけないと文章が曖昧になる場合には必ずつけましょう。
よくある間違い
行の初めに句読点(、。)や閉じかっこ(」)などが来る場合は、前の行の最後のマスの中に入れます
つまり例外として1マスに2字入れるのです。
書き終えたらチェックするまでが作文の流れ
「書きあがったらそれで終了」ではなく必ず読み直しをして誤字・脱字がないか、文章の流れがおかしくないかのチェックをしましょう
その作文や論文を添削するのは書いた本人ではなく、親御さんや塾の先生など第三者的な立場の人が行うことがおすすめです。
算数のように答えが明確でない作文は、自分では添削が難しく客観的に見る必要があるので、本人以外の人が見る方が安心です。
作文力をアップさせる勉強法
3章構成から書く練習をしてみる
作文や論文を書く上での構成の基本の型に起・承・転・結がありますが、作文を書き慣れていなかったり、苦手なお子さんだとハードルが高いものです。
そこでまず「はじめ・なか・終わり」の3章に分けて、読み手を説得できるように書く練習をしてみてはいかがでしょうか。
たいてい中学受験で課せられる作文は400~600字の文章なので、構成に沿った文章を200字あたりから書き始めて、慣れてくれば300字、400字・・と文字数を増やせるように訓練してみてください。
1章・はじめ 意見「私はこう考えます」
2章・なか 理由「なぜなら・・」
3章・終わり 結論「だから・・」
【1章・はじめ】意見「私はこう考えます」
読み手が納得するような文を書くには、すでにある情報を書くだけではなく自分が思っている意見を明確に書くことが大切です。
そのためには、実際に自分が経験した体験をふまえて書いていくと分かりやすい文になります。
国語や算数などの知識を問うテストではみることのできない、その子供の考え方や人としての様子を知りたいと思っている学校には、実体験に沿った具体的な例をあげて書いていくと読み手にわかりやすく伝わります。
【2章・なか】理由「なぜなら・・」
学校によっては情報処理の力を求める学校もあります。
そのような場合は資料を読み、その中の情報を使って自分の考えを理由とともに文章にすることが必要です。
与えられた資料の中から必要な情報を抜き出し、自分の考えを簡潔にまとめた文章を書いてください。
それは与えられた情報を並べただけの文ではなく、自分の言葉を書くことです。
自分の考えは文章の中の主役ですから一言で終わってはいけません。
情報や体験した内容だけが主な内容となってもいけません。
自分の意見や考えを文章の中心として「なぜそう思うのか」という理由の中に、情報や経験が例として使われるという感じで文全体を作りましょう。
また「なぜなら」の後に「例えば」「もしも」などの要素を取り入れると、考えを広げていくことができるので文字数も自然に増やすことができます。
【3章・終わり】結論「だから・・」
前段落を受けての結論を導き出します。
何が言いたいのかをしっかりと書き、反論できないような納得できる結論を記せば読み手を説得させることができるでしょう。
短くてもいいから日記をつける
作文力をアップさせる勉強法には、問題集を使ったり・通信教育で作文の添削をしてもらったり、と色々な方法があります。
我が家では塾の先生に『中学受験の作文のための練習として普段から日記をつけるのが良い勉強方法ですよ』という話を聞き実践していました。
日記の基本は他人が読んでも分かるように書くことなので、自分だけ分かればいいというのではダメなんです
たとえ100字でも200字でも
- 事実をありのままに書く
- 言葉で記録する
という能力を日々の練習で鍛えておけば、受験作文で具体例・体験談を書くときに役立ちます。
関連記事中学受験の作文の勉強法には日記!書き方がアップする小学生高学年のコツ
普段の会話から考える練習をする
また作文力をつけるためには文を書くだけではなく日常的な会話の中から、自分の考えを言える練習をしておくのも良い方法です。
家族はその聞き役になってあげてください。
例えば学校での出来事を一言で終わらせるのではなく
〇〇活動をしたけれど◇◇がつまらなかった。もっとこうすればいいと思った
など具体的な会話や理由まで言えるように努力します。
練習するうちに色々な言葉を使うことができるようになるので、語彙力も身につきます。
聞き役になる親御さんも子供自身が自分の意見が言えるように「なぜそう思ったの?」などと質問を与えてあげてください。
またテレビもニュース番組を少し見るようにしたり、新聞の社会面だけでも目を通すようにしたりします。
そしてそのニュースについてどう思うのか、自分の考えが言えるようにしておきましょう。
始めは難しいかもしれませんが何かの話題に自分の意見を言い、その理由を必ず言うように決めておけば徐々に慣れていくはずです。
そして時間をとって段落や漢字を意識しながら実際に文にしてみましょう。
模範解答の作文を読んでみる
たいていの公立中高一貫校対策の問題集には模範解答が付録としてついています。
模範解答とされているくらいですから文章の作り方が優れています
文章の構成は作文を書くために基本となるものですから、もしも苦手ならば正しい構成を学ばなければいけません。
作文は書くのも添削も時間がかかるものですが、読むという作業は書いて添削をする時間に比べると、はるかに速く行うことができます。
塾に通うために電車を使うなら、電車の中でも読むことができます。
色々なお手本を読んでいくうちに、構成がどのようになっているのか見えてくるでしょう。
自分が書くときに真似してみたいと思える文体が見つかってきたら、実際に自分でそれを真似て作文を書いてみましょう。
模範解答を見本にして書いてみる
書くこと自体が苦手なお子さんだと200字すら書くことが難しいのも事実です。
そんなときには模範解答の作文を読んで、真似をして書いてみましょう
どんなに記憶力の優れたお子さんでも、文章の一字一句そのままを丸暗記できるものではありません。
ですから練習するときに模範解答を真似して書いたとしても、自分の言葉で再構成されているので立派な勉強になるのです。
模範解答には構成だけでなく良い言い回しや表現も含まれていますから、良い部分はどんどん吸収して自分の作文に取り入れるよう練習していきましょう
- 自分の考えやその理由をどのような順番で書いているのか
- それぞれの段落のボリュームはどの程度か
など参考にできる情報がたくさん詰まっています。
また、よくわからないテーマについての出題でも、模範解答を見て内容を考えながら一度自分で書いてみることが練習になります。
模範解答をお手本として真似することは、作文の力をつけるために大いに役に立つのです。
まとめ
作文はほとんどすべての公立中高一貫校で出題されていて、作文の出題を通して子供の考える力や表現力を見られます。
作文の文字数は400字前後~600字の学校が多く、考え方を問われたり、意見を述べたり、と書くことに慣れていないとなかなか難しい作業です。
作文の練習方法としては、書くこと・考えることです。
起承転結でも3章構成でも、構成はどちらでも構いませんから、書くべき内容を取り入れていく練習が大事です。
普段の生活の中でも、自分の意見をまとめる習慣をつけたり、わかりやすく正確に伝えることを心がけていきましょう。